ナップスターの誕生から消滅(その後、ナップスター 2.0として復活するのだが)
までをリアルに語っている良書だ。レコード会社などとのやり取りや、
ナップスター内部の抗争、役員の勝手な行動など面白く読める。
このように読み物としても面白いのだが、興味をひかれるのはそれだけではない。
たとえば、ローレンス・レッシグの『コモンズ』(翔泳社)で述べられている
著作権のあり方を頭に入れてから本書を読むと、別のものが見えてくるはずだ。
ファイル共有ソフトが悪いのか、それともファイル共有という考え方が悪いのか。
その後のファイル共有ソフト(WinMXなど)の発展を見れば、ナップスターの
やり方はたしかに良くなかった。では、どうすればいいのか? そのヒントが
本書に隠されている。
また、著作権の現代的なあり方について知りたければ、立場の違う論者が
さまざまな視点から述べている『デジタル著作権』(ソフトバンクパブリッ
シング)をお勧めする。同書ではCCCD(Copy Contol CD)の是非について
も触れているので、興味のある方はそこだけでも読むといいだろう。
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ナップスター狂騒曲 単行本 – 2003/9/27
ジョセフ・メン
(著),
合原 弘子|ガリレオ翻訳チーム
(翻訳)
刊行記念イベントあり!書籍購入特典あり!
すべては17歳のハッカー青年のアイディアに、強欲な叔父が目をつけたことから始まった。「聴きたい曲をインターネットで素早く探し出したい」という夢を実現させるため、誰とでもファイルを自由に交換できる巨大な可能性を誕生させ、数千万人のユーザーを抱えたトップ企業となったナップスター社がなぜ崩壊したのか。音楽業界との戦い、経営陣の内輪もめ、クレイジーな経営戦略、心身ともに疲れ果てたエンジニアたち、そして敗訴。2002年、ロキシオ社による買収でナップスターは終止符を打たれたが、その思想はグヌーテラ、WinMXなどに受け継がれている。 自由にファイルを交換するのは犯罪なのか、革命なのか。世界を揺るがせたインターネットの革命児の誕生から消滅までをリアルに描いた力作。
「聴きたい曲をインターネットで素早く探し出したい」——誰もが抱く夢を実現させたナップスターは、一方で既得権益を守りたいレコード業界と激しく対立することになった。世界を揺るがせたインターネットの革命児の誕生から消滅までを描く。
【著者コメント】
ナップスター社について本を書こうと決意した理由は3つある。
まず第一に、メディアが取り上げていた内容はすべて表面的なもので、驚くほど多くの情報が見落とされていた。とりわけ、ナップスター社を法人化したある人物が果たした役割に関して。その人物は、『タイム』誌と『フォーチュン』誌の表紙を飾った世界一有名なハッカー青年、ショーン・ファニングではない。ショーンのおじにあたり、ナップスター社が生まれたときに、同社株式の70パーセントを保有したジョン・ファニングだ。これまで明るみに出てこなかったナップスター社内部の混乱、裏切り、あつれきに比べたら、レコード業界との裁判など、和やかに見えるほどだ。ナップスターは、消費者が巨大なエンターテインメント業界からコントロールを取り戻す武器となり、急速に普及したが、そのプロセスは同時に、インターネットが発達した社会では、わずか数人の個人起業家が良くも悪くも大きな力を振るうことができることをも、ドラマチックに見せているのだ。
第二の理由は、同社が、インターネット・バブルに浮かれた凡百の企業とはまったく異質であることだ。ナップスター社は、ネットの本質に根ざした革新的な技術を持っていた。ナップスター社のリーダーたちが次々と大きな賭けに出続けた結果、デジタル著作権の侵害、消費者の権利、言論の自由、ネット自体の将来像といった重要な政治経済的問題に関して、どこで線が引かれるべきかという議論がつきつめられていった——こういったことのすべては、理想主義者だったが、まずいアドバイスに耳を傾けてしまった17歳の青年、ショーン・ファニングの精神に端を発しているのだ。
第三の理由は、第二の理由とほとんど矛盾するものだ。ナップスター社は他の新興オンライン企業とは異なっているが、しかしその物語はやはり、インターネット・バブルという、資本主義の最もホットな時点での問題点を浮き彫りにしている。多くの新興企業の場合は、ベンチャーキャピタリストたちが馬鹿げた事業に投資したわけだが、ナップスター社の場合は、投資家たちは「違法性を認識した上で」大金を注ぎ込んだのだ。ナップスター社の物語は、正確に読めば、かつてない速さと規模で技術を普及させるという目的で殺到した金が、まさにその技術の進展を阻害し、残酷なしっぺ返しをもたらしたというものだった。
すべては17歳のハッカー青年のアイディアに、強欲な叔父が目をつけたことから始まった。「聴きたい曲をインターネットで素早く探し出したい」という夢を実現させるため、誰とでもファイルを自由に交換できる巨大な可能性を誕生させ、数千万人のユーザーを抱えたトップ企業となったナップスター社がなぜ崩壊したのか。音楽業界との戦い、経営陣の内輪もめ、クレイジーな経営戦略、心身ともに疲れ果てたエンジニアたち、そして敗訴。2002年、ロキシオ社による買収でナップスターは終止符を打たれたが、その思想はグヌーテラ、WinMXなどに受け継がれている。 自由にファイルを交換するのは犯罪なのか、革命なのか。世界を揺るがせたインターネットの革命児の誕生から消滅までをリアルに描いた力作。
「聴きたい曲をインターネットで素早く探し出したい」——誰もが抱く夢を実現させたナップスターは、一方で既得権益を守りたいレコード業界と激しく対立することになった。世界を揺るがせたインターネットの革命児の誕生から消滅までを描く。
【著者コメント】
ナップスター社について本を書こうと決意した理由は3つある。
まず第一に、メディアが取り上げていた内容はすべて表面的なもので、驚くほど多くの情報が見落とされていた。とりわけ、ナップスター社を法人化したある人物が果たした役割に関して。その人物は、『タイム』誌と『フォーチュン』誌の表紙を飾った世界一有名なハッカー青年、ショーン・ファニングではない。ショーンのおじにあたり、ナップスター社が生まれたときに、同社株式の70パーセントを保有したジョン・ファニングだ。これまで明るみに出てこなかったナップスター社内部の混乱、裏切り、あつれきに比べたら、レコード業界との裁判など、和やかに見えるほどだ。ナップスターは、消費者が巨大なエンターテインメント業界からコントロールを取り戻す武器となり、急速に普及したが、そのプロセスは同時に、インターネットが発達した社会では、わずか数人の個人起業家が良くも悪くも大きな力を振るうことができることをも、ドラマチックに見せているのだ。
第二の理由は、同社が、インターネット・バブルに浮かれた凡百の企業とはまったく異質であることだ。ナップスター社は、ネットの本質に根ざした革新的な技術を持っていた。ナップスター社のリーダーたちが次々と大きな賭けに出続けた結果、デジタル著作権の侵害、消費者の権利、言論の自由、ネット自体の将来像といった重要な政治経済的問題に関して、どこで線が引かれるべきかという議論がつきつめられていった——こういったことのすべては、理想主義者だったが、まずいアドバイスに耳を傾けてしまった17歳の青年、ショーン・ファニングの精神に端を発しているのだ。
第三の理由は、第二の理由とほとんど矛盾するものだ。ナップスター社は他の新興オンライン企業とは異なっているが、しかしその物語はやはり、インターネット・バブルという、資本主義の最もホットな時点での問題点を浮き彫りにしている。多くの新興企業の場合は、ベンチャーキャピタリストたちが馬鹿げた事業に投資したわけだが、ナップスター社の場合は、投資家たちは「違法性を認識した上で」大金を注ぎ込んだのだ。ナップスター社の物語は、正確に読めば、かつてない速さと規模で技術を普及させるという目的で殺到した金が、まさにその技術の進展を阻害し、残酷なしっぺ返しをもたらしたというものだった。
- 本の長さ500ページ
- 言語日本語
- 出版社ソフトバンククリエイティブ
- 発売日2003/9/27
- ISBN-104797318643
- ISBN-13978-4797318647
商品の説明
著者からのコメント
著者より
ナップスター社について本を書こうと決意した理由は3つある。 まず第一に、メディアが取り上げていた内容はすべて表面的なもので、驚くほど多 くの情報が見落とされていた。とりわけ、ナップスター社を法人化したある人物が果 たした役割に関して。その人物は、『タイム』誌と『フォーチュン』誌の表紙を飾っ た世界一有名なハッカー青年、ショーン・ファニングではない。ショーンのおじにあ たり、ナップスター社が生まれたときに、同社株式の70パーセントを保有したジョ ン・ファニングだ。これまで明るみに出てこなかったナップスター社内部の混乱、裏 切り、あつれきに比べたら、レコード業界との裁判など、和やかに見えるほどだ。 ナップスターは、消費者が巨大なエンターテインメント業界からコントロールを取り 戻す武器となり、急速に普及したが、そのプロセスは同時に、インターネットが発達 した社会では、わずか数人の個人起業家が良くも悪くも大きな力を振るうことができ ることをも、ドラマチックに見せているのだ。 第二の理由は、同社が、インターネット・バブルに浮かれた凡百の企業とはまった く異質であることだ。ナップスター社は、ネットの本質に根ざした革新的な技術を 持っていた。ナップスター社のリーダーたちが次々と大きな賭けに出続けた結果、デ ジタル著作権の侵害、消費者の権利、言論の自由、ネット自体の将来像といった重要 な政治経済的問題に関して、どこで線が引かれるべきかという議論がつきつめられて いった――こういったことのすべては、理想主義者だったが、まずいアドバイスに耳 を傾けてしまった17歳の青年、ショーン・ファニングの精神に端を発しているのだ。 第三の理由は、第二の理由とほとんど矛盾するものだ。ナップスター社は他の新興 オンライン企業とは異なっているが、しかしその物語はやはり、インターネット・バ ブルという、資本主義の最もホットな時点での問題点を浮き彫りにしている。多くの 新興企業の場合は、ベンチャーキャピタリストたちが馬鹿げた事業に投資したわけだ が、ナップスター社の場合は、投資家たちは「違法性を認識した上で」大金を注ぎ込 んだのだ。ナップスター社の物語は、正確に読めば、かつてない速さと規模で技術を 普及させるという目的で殺到した金が、まさにその技術の進展を阻害し、残酷なしっ ぺ返しをもたらしたというものだった。
ナップスター社について本を書こうと決意した理由は3つある。 まず第一に、メディアが取り上げていた内容はすべて表面的なもので、驚くほど多 くの情報が見落とされていた。とりわけ、ナップスター社を法人化したある人物が果 たした役割に関して。その人物は、『タイム』誌と『フォーチュン』誌の表紙を飾っ た世界一有名なハッカー青年、ショーン・ファニングではない。ショーンのおじにあ たり、ナップスター社が生まれたときに、同社株式の70パーセントを保有したジョ ン・ファニングだ。これまで明るみに出てこなかったナップスター社内部の混乱、裏 切り、あつれきに比べたら、レコード業界との裁判など、和やかに見えるほどだ。 ナップスターは、消費者が巨大なエンターテインメント業界からコントロールを取り 戻す武器となり、急速に普及したが、そのプロセスは同時に、インターネットが発達 した社会では、わずか数人の個人起業家が良くも悪くも大きな力を振るうことができ ることをも、ドラマチックに見せているのだ。 第二の理由は、同社が、インターネット・バブルに浮かれた凡百の企業とはまった く異質であることだ。ナップスター社は、ネットの本質に根ざした革新的な技術を 持っていた。ナップスター社のリーダーたちが次々と大きな賭けに出続けた結果、デ ジタル著作権の侵害、消費者の権利、言論の自由、ネット自体の将来像といった重要 な政治経済的問題に関して、どこで線が引かれるべきかという議論がつきつめられて いった――こういったことのすべては、理想主義者だったが、まずいアドバイスに耳 を傾けてしまった17歳の青年、ショーン・ファニングの精神に端を発しているのだ。 第三の理由は、第二の理由とほとんど矛盾するものだ。ナップスター社は他の新興 オンライン企業とは異なっているが、しかしその物語はやはり、インターネット・バ ブルという、資本主義の最もホットな時点での問題点を浮き彫りにしている。多くの 新興企業の場合は、ベンチャーキャピタリストたちが馬鹿げた事業に投資したわけだ が、ナップスター社の場合は、投資家たちは「違法性を認識した上で」大金を注ぎ込 んだのだ。ナップスター社の物語は、正確に読めば、かつてない速さと規模で技術を 普及させるという目的で殺到した金が、まさにその技術の進展を阻害し、残酷なしっ ぺ返しをもたらしたというものだった。
出版社からのコメント
担当編集者より
すべては17歳のハッカー青年のアイディアに、強欲な叔父が目をつけたことから始 まった。「聴きたい曲をインターネットで素早く探し出したい」という夢を実現させ るため、誰とでもファイルを自由に交換できる巨大な可能性を誕生させ、数千万人の ユーザーを抱えたトップ企業となったナップスター社がなぜ崩壊したのか。音楽業界 との戦い、経営陣の内輪もめ、クレイジーな経営戦略、心身ともに疲れ果てたエンジ ニアたち、そして敗訴。2002年、ロキシオ社による買収でナップスターは終止符を打 たれたが、その思想はグヌーテラ、WinMXなどに受け継がれている。 自由にファイルを交換するのは犯罪なのか、革命なのか。世界を揺るがせたインター ネットの革命児の誕生から消滅までをリアルに描いた力作。
すべては17歳のハッカー青年のアイディアに、強欲な叔父が目をつけたことから始 まった。「聴きたい曲をインターネットで素早く探し出したい」という夢を実現させ るため、誰とでもファイルを自由に交換できる巨大な可能性を誕生させ、数千万人の ユーザーを抱えたトップ企業となったナップスター社がなぜ崩壊したのか。音楽業界 との戦い、経営陣の内輪もめ、クレイジーな経営戦略、心身ともに疲れ果てたエンジ ニアたち、そして敗訴。2002年、ロキシオ社による買収でナップスターは終止符を打 たれたが、その思想はグヌーテラ、WinMXなどに受け継がれている。 自由にファイルを交換するのは犯罪なのか、革命なのか。世界を揺るがせたインター ネットの革命児の誕生から消滅までをリアルに描いた力作。
内容(「MARC」データベースより)
音楽好きな天才オタク青年が音楽の自由を求めて開発したP2Pソフト、ナップスター。一時は数千万人のユーザーを抱えるまでになったナップスター社は、なぜ崩壊したのか。業界の内幕を豊富なエピソードを通してリアルに描く。
登録情報
- 出版社 : ソフトバンククリエイティブ (2003/9/27)
- 発売日 : 2003/9/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 500ページ
- ISBN-10 : 4797318643
- ISBN-13 : 978-4797318647
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,065,649位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 568位企業動向
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2003年10月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年5月5日に日本でレビュー済み
八年ぐらい前に読みました。最先端の技術についての法理論を構築するのが、かなり高度なテーマでした。
ナップスターには二つの見方が出来る。ひとつは、他人のアイデアを無許可で配布する泥棒出版社。もうひとつは、市民が情報にアクセスできる自由を保障するソフトウェア図書館。レコード会社は、ナップスターを言語道断の泥棒出版社とみなしていた。だから、訴訟になった。結果的には、ナップスターは敗訴した。ナップスター設立の発端は、好きな音楽を好きなだけ聴きたいという、若者の個人的な欲求だ。しかし、この欲求を単なる泥棒とは決め付けられない。レコード会社に温度差があり、ミュージシャンの中でも賛否が分かれた。
AOLはタイムワーナーを買収した。AOLのように、インターネットを誰もが利用することに存在意義がある企業では、ナップスターのようにアクセス数が圧倒的なサイトはかなりな魅力だ。いくらでも利用価値はある。ミュージシャンで、ナップスターに賛成する人がいるのは意外にも感じられる。自分の曲をタダで聴かれると、ファンはCDなんざ誰も買わなくなる気がする。よく見るとそうでもない。どんな曲が売れるかと言えば、(多くの人間に聴いてもらい)評価が確立した曲だ。
特に、これから売り出す無名のミュージシャンは、目先のCDの売れ行きより、みんなに聴いてもらい知名度の向上により評価が確立することのほうが重要だ。視聴者が自分が聴きたい曲に簡単にアクセスできる環境は、口コミ情報の地球規模での共有だ。これは、ナップスターが地球にもたらした大きな光だと思う。
レコード会社の利益はミュージシャンの利益と必ずしも一致しない。大手レコード会社(CBSやEMI)と契約せずに、ミュージシャンがメジャーになるのは非常に難しい。大手レコード会社の宣伝力は無視できない。契約においては、ミュージシャンよりも大手レコード会社の方が立場が有利だ。
ナップスターが存在すれば、話は変わってくる。誰もが好きな曲を好きなタイミングで入手できる。自分の頭で聴きたい曲を決めてダウンロードする。そうして、多くの視聴者に評価されたミュージシャンが、人気を得る。ミュージシャンは、(大手レコード会社に依存しないでも)ナップスターを利用して知名度を高めるチャンスを得ることが出来る。
「レコード会社は、泥棒出版社の被害者だ」という論法は、一見すると分かりやすい。果たしてそうか?視聴者がアクセスできる情報をコントロールすることで、CDの購入者に過度な負担を強要していないかどうかだ。この論点はアメリカでも日本でも動かない。ナップスターのように誰でも自由に情報を入手できれば、自由に評価も出来る。情報へのアクセスを資本力でコントロールする手法が通用しなくなる。ナップスターは、市民の自己選択権に大きな光をもたらしたと思う。
日本のジャーナリズムでは決して取り上げられないテーマを正面から取り上げられた意義から、星五つです。
ナップスターには二つの見方が出来る。ひとつは、他人のアイデアを無許可で配布する泥棒出版社。もうひとつは、市民が情報にアクセスできる自由を保障するソフトウェア図書館。レコード会社は、ナップスターを言語道断の泥棒出版社とみなしていた。だから、訴訟になった。結果的には、ナップスターは敗訴した。ナップスター設立の発端は、好きな音楽を好きなだけ聴きたいという、若者の個人的な欲求だ。しかし、この欲求を単なる泥棒とは決め付けられない。レコード会社に温度差があり、ミュージシャンの中でも賛否が分かれた。
AOLはタイムワーナーを買収した。AOLのように、インターネットを誰もが利用することに存在意義がある企業では、ナップスターのようにアクセス数が圧倒的なサイトはかなりな魅力だ。いくらでも利用価値はある。ミュージシャンで、ナップスターに賛成する人がいるのは意外にも感じられる。自分の曲をタダで聴かれると、ファンはCDなんざ誰も買わなくなる気がする。よく見るとそうでもない。どんな曲が売れるかと言えば、(多くの人間に聴いてもらい)評価が確立した曲だ。
特に、これから売り出す無名のミュージシャンは、目先のCDの売れ行きより、みんなに聴いてもらい知名度の向上により評価が確立することのほうが重要だ。視聴者が自分が聴きたい曲に簡単にアクセスできる環境は、口コミ情報の地球規模での共有だ。これは、ナップスターが地球にもたらした大きな光だと思う。
レコード会社の利益はミュージシャンの利益と必ずしも一致しない。大手レコード会社(CBSやEMI)と契約せずに、ミュージシャンがメジャーになるのは非常に難しい。大手レコード会社の宣伝力は無視できない。契約においては、ミュージシャンよりも大手レコード会社の方が立場が有利だ。
ナップスターが存在すれば、話は変わってくる。誰もが好きな曲を好きなタイミングで入手できる。自分の頭で聴きたい曲を決めてダウンロードする。そうして、多くの視聴者に評価されたミュージシャンが、人気を得る。ミュージシャンは、(大手レコード会社に依存しないでも)ナップスターを利用して知名度を高めるチャンスを得ることが出来る。
「レコード会社は、泥棒出版社の被害者だ」という論法は、一見すると分かりやすい。果たしてそうか?視聴者がアクセスできる情報をコントロールすることで、CDの購入者に過度な負担を強要していないかどうかだ。この論点はアメリカでも日本でも動かない。ナップスターのように誰でも自由に情報を入手できれば、自由に評価も出来る。情報へのアクセスを資本力でコントロールする手法が通用しなくなる。ナップスターは、市民の自己選択権に大きな光をもたらしたと思う。
日本のジャーナリズムでは決して取り上げられないテーマを正面から取り上げられた意義から、星五つです。
2008年1月23日に日本でレビュー済み
日本のバブルは覚えてなくても、2000年前後に発生したインターネットバブル、
通称.comバブルは身をもって覚えてる人も多いでしょう。
その中でP2Pという言葉を世に広めたNapsterの物語です。
冒頭、開発者のショーンはMDMAを含みパーティに出て、
.comバブルで成金になった友達とスポーツカーを乗り回します。
その象徴的なプロローグから、開発、VCによる資金の投入、
愚かな叔父の過ちに次ぐ過ち、そして裁判、倒産まで描かれます。
アメリカでは、革新的な発明をした者は報われますが、
日本では犯罪者扱いです。
厚めの本ですが、その時代のスピード感と相まって、
一気に読めてしまいます。
通称.comバブルは身をもって覚えてる人も多いでしょう。
その中でP2Pという言葉を世に広めたNapsterの物語です。
冒頭、開発者のショーンはMDMAを含みパーティに出て、
.comバブルで成金になった友達とスポーツカーを乗り回します。
その象徴的なプロローグから、開発、VCによる資金の投入、
愚かな叔父の過ちに次ぐ過ち、そして裁判、倒産まで描かれます。
アメリカでは、革新的な発明をした者は報われますが、
日本では犯罪者扱いです。
厚めの本ですが、その時代のスピード感と相まって、
一気に読めてしまいます。
2003年9月30日に日本でレビュー済み
世界を揺るがせたインターネットの革命児の誕生から消滅までを赤裸々に語った本書は、「あ、あのナプスターか」と一言で語れない、こんなにまでも奥深く、さまざまな難局を乗り越える様は、どこかゲーム的で駆け引きが興味深い。IT系の職種の方には人事に思えない現実味もあり面白く読破することができた一冊。是非お勧めしたい。